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仙台高等裁判所 昭和51年(ネ)271号 判決

控訴人

矢吹益三郎

被控訴人

福島信用金庫

右代表者

人首敬行

右訴訟代理人

土屋芳雄

外二名

主文

原判決を次のとおり変更する。

控訴人は被控訴人に対し、別紙目録(二)記載の建物について、福島地方法務局昭和五〇年一月八日受付第三三一号をもつてした所有権保存登記の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

事実

被控訴代理人は、当審において、請求の趣旨を交替的に変更して、主文第二、三項と同旨の判決を求め、控訴人は請求棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、次に付加するほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

(当事者の主張)

被控訴代理人は

「控訴人は、福島地方法務局昭和五〇年一月八日受付第三三一号をもつて別紙目録(二)記載の建物(以下別紙目録(一)、(二)記載の建物を各建物(一)、建物(二)という)につき所有権保存登記をした。

よつて、被控訴人は、建物(一)、(二)の所有権にもとづき、控訴人に対し、右所有権保存登記の抹消登記手続をするよう求める。」と請求原因を訂正する。

と述べた。

控訴人は

控訴人が、建物(二)につき、被控訴人主張のとおり所有権保存登記をしたことは認める。

と述べた。

(証拠) 〈略〉

理由

一請求の原因に対する当裁判所の認定判断は、次の点を補足付加するほかは原判決理由一ないし三項と同一であるからこれを引用する。

1  控訴人が建物(二)につき被控訴人主張のとおり所有権保存登記を経由したことは当事者間に争いがない。

2  〈証拠〉によれば、訴外鈴木太吉は、昭和二七年に建物(一)のうち母屋を建築して所有し、ついで昭和四五年ごろその附属建物を母屋の西側に接着して建築し、昭和四七年四月二七日建物(一)に本件根抵当権を設定し、その後の昭和四八年六月一〇日建物(二)を建物(一)の東側に接着させて新築し、建物(一)の競落許可決定のあつた昭和五〇年四月二三日ごろまで、その子である鈴木春夫が、建物(一)、(二)を通じて水道、浄化槽工事事業の事務所、ガレージ、従業員宿泊所に充てて使用していたこと、建物(一)、(二)はいずれも二階建で、階段は建物(一)、(二)を通じて建物(二)だけにある(このことはすでに認定した)が、これは、もともと建物(一)にあつた階段を取りこわし、同建物の二階床面の階段口を塞いだことによるものであつて、建物(二)の新築に加えて殊更建物(一)にも改造を加えた結果によるものであること、建物(一)、(二)のみならずその敷地はいずれも訴外鈴木太吉の所有であつたところから、控訴人はこれを一括して買受けたことがそれぞれ認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

根抵当権の効力は、根抵当権設定後その目的不動産に附加して之と一体をなしたるものに及ぶことは民法第三七〇条本文に定めるところであり、ここに附加して一体をなしたものとは、民法二四二条に定める不動産の附合と同続または少なくともこの場合を含むものと解される。

すでに認定した事実に徴すれば、建物(二)は、建物(一)と一体として利用され、かつ取引されるべき状態にあり、その結果建物(一)に附合し、建物(一)とともに一個の所有権に服するとともに、建物(一)の根抵当権に服するものというべきである(仮に、建物(一)、(二)が合して一むねの建物を構成するものであるとしても、建物(二)が、構造上建物(一)と区分され、独立して住居等としての用途に供することができるとは認められないから、控訴人が、建物(二)にういて、建物の区分所有等に関する法律第一条に定める区分所有権を有するものとは認められない)。

二そうすると、被控訴人は、昭和五〇年四月二三日競落により、建物(一)、(二)の所有権を取得したものというべきであり、かつ、控訴人が建物(二)についてなした本件所有権保存登記は、実体に符合しない登記というべきであるから、控訴人に対し、所有権にもとづき右所有権保存登記の抹消登記手続を求める権利を有するというべきである。

よつて、被控訴人の控訴人に対する本訴請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九六条を適用して主文のとおり判決する。

(石井義彦 守屋克彦 田口祐三)

目録

(一) 福島市下野寺字天神田一五番地八、一五番地九、一五番地一二

家屋番号  一五番八

一 木造瓦葺二階建居宅 一棟

床面積 一階 49.98平方メートル

二階 34.78平方メートル

(附属建物)

一 軽量鉄骨造陸屋根二階建事務所倉庫

床面積 一階 30.24平方メートル

二階 30.24平方メートル

(二) 福島市下野寺字天神田一五番地八、一五番地六、一五番地一一

家屋番号 一五番八の二

一 鉄骨造亜鉛メツキ鋼板葺陸屋根二階建居宅物置 一棟

床面積 一階 57.36平方メートル

二階 27.31平方メートル

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